本当は、こう思っているのに相手に言えない。本当は、こうしてほしいのにお願いできない。そんな風に感じたことはありますか?逆に、『思っていることは言ったらいいでしょ?』『え、そんな風に思っていたの?』と、相手がストレスを感じていることに気づかずに驚いたことがあるという方もおられるかもしれませんね。
人間関係の難しいところは、きっとこういったところで、気づかないボタンの掛け違いのように自分さえ我慢すればいいと蓋をしている気持ちや伝わっているつもりのコミュニケーションの積み重ねが、相手や自分に対する信頼や、期待を失わせてしまうことかもしれません。
今でもたまに思いだす両親の記憶があります。『今日は僕がごはん作ってあげようか??』と笑顔で声をかけた父と『あ、助かります~ありがとう。』と答えた母。機嫌よく、作り出した父を見ながら、聞こえないように『今日は僕が作るわ、って言ってほしいねんけどなぁ・・』とぽそっと呟きました。
誰も悪くないのかもしれないけれど、日常的にこういったチクっと胸にささるようなやり取りは、親子間でも夫婦間でも、上司と部下の間柄でも起こり得ることではないでしょうか?私の母の場合は、一ミリも気づかない父に不満を溜めていたこともあったようです。子育て全盛期もとうに終わり、あの時こんな風に感じていたのよと伝えられる今は、当時のいら立ちも笑い話に変わっているように見えます。
『伝えない我慢』より『伝え方』の工夫を
コーチングには、相手も自分も大切にしながら、対等に自分の意見を伝えるアサーティブネスというコミュニケーションスキルがあります。自分の気持ちに蓋をしてしまうよりも、どんなタイミングや伝え方であれば相手が受け取りやすい形で伝えることができるのかを考えながら伝えてみることは相手にとって、とても貴重なギフトになるのかもしれません。言い方は、少し引っかかったかもしれないけれど、父の気持ちは当時の母も嬉しかったに違いないのだから。
そんな風に気遣ってくれて、嬉しい。ありがとう。という感謝の気持ちや、こう思ってるんだよね。こう考えているんだよね。という共感を伝えたうえで、『こんな風に伝えてもらえるともっと嬉しいな。』と胸のうちに閉まっている言葉を伝えてみるのはどうでしょう。
自分の気持ちや本音をすべて相手に伝えなくても、きっと一緒に生活や仕事をすることはできるのだと思います。
だけど、溜め込んだすえ、ある日突然想いが爆発するというのも、相手にとってもツラいものがあるかもしれません。言いたいことを話せるような関係を作るために私はどう在ればいいか、というのは私自身も常に持ち続けたい問です。
『あのとき、何も言わなかったじゃん!ずっとそんな風に思っていたの?』と相手を責めるような原因探しがこれから先も、お互いの良い関係作りによく影響することは少ないでしょう。コミュニケーション中に、どちらか一方だけが悪い、いいという話はきっとなく、ただ時間さえ重ねれば自然と出来上がるものでもなく、丁寧に伝えあい感じあえる関係性の中で信頼関係が築かれるのだと私自身も肝に銘じておきたいと思っています。
そんな思いがあれば、チクッと胸に刺さったやり取りを、さらに関係をよくするチャンスに変えることもできるのではないでしょうか?大切な人とよりよい関係を築いていきたい、とお考えの際にはぜひコミュニケーションを学んでみてくださいね。